高炉水砕スラグの有益性
当社が舗装材の骨材として活用している「高炉水砕スラグ」に関して、近年さまざまな研究がおこなわれており、土木分野のみならず幅広い産業分野に有効利用され、私たちの生活に多くの有益性をもたらしています。
≪鉄鋼スラグの分類≫
※「鉄鋼スラグ」の中には様々な分類があります。当社が採用しているものは上記の表の一番上の「高炉水砕スラグ」であり、一部報道で「有害な鉄鋼スラグ」と表現されているものは主に下段の「製鋼スラグ」に属するものです。
【高炉水砕スラグとは】
大手高炉メーカー(新日鐵住金・JFEスチール・神戸製鋼所・日新製鋼)の銑鉄を作り出す工程で生れる副産物である「高炉水砕スラグ」には、以前より評価されている特性があります。即ち
① 潜在水硬性
② 軽量
③ 内部摩擦角大
④ 透水性大
これらの特性を活かし、品質が均一な「人工の砂」として古くから主に「土木分野」で建設資材として活用されてきました。
【従来からの活用例】
そのⅠ・土木分野
盛土、路床、軟弱地盤上の覆土、舗装、法面強化、ドレーン材、裏込めなど
そのⅡ・農業分野
以前より注目されていたのは、高炉水砕スラグに含まれる「ケイ酸カルシウム」で酸性土の土壌を中和し植物の育成を促す「土壌改良材」として農業分野で活用されています。
しかし、近年では高炉水砕スラグの成分的特性に着目し、土木分野以外の用途に向けての研究開発も進んでおり、幅広く高炉水砕スラグが有効活用されてきております。
【新たな活用例】
(農業分野)
東日本大震災により津波をかぶった農地では塩害により農作物が作れない状態が続いていましたが、新聞記事によると新日鐵住金と東京農業大学の共同研究により、高炉スラグに含まれる鉄分・石灰に除塩効果があるということで農地再生に活かされているという事例があります。
(漁業分野)
漁業分野でも近年問題となっているのが、森林伐採やダム建設の影響で河川から海への栄養分の流入減少による沿岸海域における海藻の減少、いわゆる「磯焼け」での漁獲高の減少です。
これに対応すべく研究されているのが、高炉スラグとコンクリートでブロック状に固めた「藻場漁礁」です。高炉スラグに含まれるミネラル分がしみ出すことにより、海藻の繁殖を促し植物プランクトンを増殖させる仕組みです。植物プランクトンを餌とする動物プランクトンが同時に増殖することで魚類が集まり漁場が形成される流れとなるわけです。
(海洋分野)
広島県福山市の福山内港湾では奥まった形状から湾内の水が淀みやすいうえに、未処理下水が流入して臭気が問題となっていました。この問題に対して新聞記事によると、JFEスチールと広島大学の共同研究で高炉スラグを海底に敷設すると、臭気の原因である硫化物がスラグ中の鉄分と結びつくなどの効果が確認できたとのことで、ホヤやカニなどの生物も生息できるように改善されたとの結果が出ているとのことです。
(地球規模分野)
地球規模での課題となっている地球温暖化についても効果を発揮する研究が進んでいます。沿岸部に高炉スラグそのものを埋めることで人工的に鉄分を補給し、海藻成長を促し藻場再生による二酸化炭素吸収も期待されています。過去30年間に消失した日本沿岸の藻場のほぼ半分をこの方法で再生することで、日本の二酸化炭素年間排出量(約13億トン)の約0.5%に当たる700万トンを吸収できるようになるとも言われています。